隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
「さぁ、行こうか」

 タキシードに着替え、いつもの何倍も魅力的な三砂が手を伸ばす。
 茉結莉は頬を染めると、ウエディングドレスの裾を持ち上げ、三砂の左手にそっと自分の右手を添えた。

 螺旋階段を慎重に上りながら、ふと顔を上げた茉結莉は小さく首を傾げる。
 貸し切りと聞いていたはずなのに、展望デッキの辺りからはざわざわと人の話し声がするのだ。

「他にもお客様がいらっしゃるんですか?」

 不思議に思いながらデッキに立った茉結莉は、さっきまでとは全く違う光景にはっと息をのんだ。
 そこには、会場を覆いつくすほどの参列者が、二人の到着を待っていたのだ。

「慶一郎さん……」

 茉結莉の震える声は、割れんばかりの歓声と拍手に包まれる。
 涙を溢れさせた茉結莉が顔を上げると、父と母が涙を流しながら肩を寄せ合う姿が見えた。
 その奥には、園子や大輔、三砂の両親、そして職人や社員たちの顔もある。
 誰もが満面の笑みで二人の結婚を祝福しているのだ。

(もうこれは最高の恋のプレゼントじゃない。最高の愛のプレゼントだ……)

 茉結莉の頬を次から次に幸せの涙が零れる。

「茉結莉」

 すると三砂がそっと茉結莉に向き直った。
 三砂は茉結莉の両手を握り締めると、優しく口元を引き上げる。

「本当に後悔はしない?」

 そう茉結莉に問いかける顔は、あの日からずっと変わらない。
 茉結莉が愛しくてたまらない三砂の顔だ。
 茉結莉は瞳を上げると、静かにうなずいた。

「はい。慶一郎さんだから」

 茉結莉の凛とした声に重なるように、鐘の音が汽笛にのせて響き渡る。
 柔らかな潮風は、二人の門出を祝うように、いつまでもいつまでも皆を優しく包み込んでいた。


Fin.
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