隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 螺旋の階段を上り、最上階の展望デッキに出る。
 爽やかな風が茉結莉の頬を撫でた時、茉結莉は目の前の光景に目を奪われた。
 そこは船の上とは思えない庭園が広がっており、真っすぐに伸びる道の先にはチャペルが見えるのだ。

「慶一郎さん……ここって……」

 茉結莉は思わず声を震わせながら顔を上げる。
 すると三砂はにっこりとほほ笑んだ顔を覗き込ませた。

「ここはドレスコードがあるそうだから、少し身支度を整えようか」

 その口ぶりに、あの夜の記憶が蘇る。

「もう、慶一郎さんったら」

 茉結莉は目尻に浮かぶ涙をそっと指で拭うと、女性スタッフに案内されて“ブライズルーム”と書かれた部屋に入った。

「こちらです」

 丁寧に扉が開かれ、一歩中へと入った茉結莉は再び言葉を失う。

 目に飛び込んできたのは、まるでディスプレイのように飾られた純白のウエディングドレスだ。
 それを見た瞬間、もう茉結莉は言葉にならない声を上げると、わんわんと泣き出してしまった。

 形だけの夫婦からはじまった自分たちには、結婚式なんて縁がないと思っていた。
 それなのに、まさか三砂がこんなサプライズを用意していたなんて、思いもよらなかった。

「俺の花嫁は、本当に泣き虫だな」

 そう言いながら茉結莉を抱きしめる三砂の瞳も、涙で潤んでいる。

「慶一郎さん」

 茉結莉は思わず三砂の首元に抱きついた。
 それからしばらく、二人は輝く様な光に照らされながら、いつまでもお互いを抱きしめ合った。
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