電車の向こう側。【完結】
一方そのころ。
音のない部屋で、結城聖は目を覚ました。
白い天井、薬の匂い。
まぶたの裏には、まだ光が残っていた。
「……ここは?」
声がかすれて出ない。
手を伸ばすと、点滴の管が揺れた。
扉の外から看護師の足音が聞こえる。
聖は、身体を起こそうとして、やめた。
その代わりに、ベッドの脇のテーブルに置かれたノートを手に取る。
そこには、書きかけの楽譜があった。
タイトル欄には、震える文字でこう書かれていた。
——「電車の向こう側。」
聖は小さく息を吸った。
「……俺は、……何を見たんだ。」
閉じた瞼の奥に、金色の電車がまだ焼き付いていた。