電車の向こう側。
第3章 交差する光
まぶしい朝の光が差し込んでいた。
白い天井、消毒液のにおい、心拍モニターの小さな電子音。
結城聖はゆっくりと目を開けた。
「……ここは?」
声を出そうとしたが、喉の奥がひりついた。
ベッドの脇には誰もいない。
代わりに、花瓶に差された白い百合が、一輪だけ静かに咲いていた。
カーテンの隙間から、街の光が差し込む。
それは見慣れたはずの風景なのに、どこか違っていた。
ベッドサイドに置かれたリモコンを手に取り、テレビをつける。
ニュースキャスターの声が流れる。
「本日、東京都内では特に大きな事件や事故の報告はありません――」