電車の向こう側。【完結】
未来の呼吸が止まった。
「どうして、そんなこと言うの?」
「俺は知ってるんだよ。だって、もともとこの世界の人間じゃないから。」
聖はピアノの上に肘をつき、少し笑った。
その笑顔には、どこか諦めが混じっていた。
「俺は、お前の知っている通り、もとの世界では有名なピアニストだった。名前は——結城聖。」
(……やっぱり。)
未来は思わず声を上げた。
「やっぱり、あなたが——!」
「でももう、その名前は意味がない。ここでは誰一人、俺のことを覚えてないから。」
聖は鍵盤をなぞりながら続けた。