明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
***
小さな包みを手に戻ってきた尚文は、店の入り口を見て首を傾げた。
「……玲子君?」
店の中を見渡しても、玲子の姿はない。まさか店を出たのかと、慌てて周囲を確認するが、どこにも見当たらなかった。
と、その時。
「尚文!」
怒気を帯びた声とともに、通りの向こうから将吾が駆け寄ってきた。額には汗がにじみ、軍帽は手に持ったままだ。
「将吾? どうしてここに?」
「それはこちらの台詞だ! 玲子殿はどこに居る!?」
「……玲子君なら、ここで羽織紐を選んでいるはずだったんだ。僕が少し席を外している間に、居なくなってしまったみたいで……」
「ふざけるな! お前が目を離した少しの間に、何かが起きたんだ!」
将吾の怒声に、尚文は唇を噛んだ。
「……すまない。本当に、すぐ戻るつもりだった。まさか、こんなことになるなんて……」
二人のただならぬ気配に、小間物屋の奥から、遠慮がちに店員の中年女性が顔を出した。
「あ、あの……お嬢様をお探しですか?」
二人がハッとして振り向く。
「知っているのか?」
「はい、さっき、別のご婦人がいらっしゃって……”身内です”って。お嬢様はちょっと驚いていた様子でしたけれど……手を引かれて馬車に……」
「相手の女は、どんな女だった!? 歳は? 背格好は?」
「えっと……ええと……四十代くらい、派手な着物で、髪を結い上げてて」
その特徴を聞いた瞬間、将吾の瞳に閃光のような鋭さが宿る。
小さな包みを手に戻ってきた尚文は、店の入り口を見て首を傾げた。
「……玲子君?」
店の中を見渡しても、玲子の姿はない。まさか店を出たのかと、慌てて周囲を確認するが、どこにも見当たらなかった。
と、その時。
「尚文!」
怒気を帯びた声とともに、通りの向こうから将吾が駆け寄ってきた。額には汗がにじみ、軍帽は手に持ったままだ。
「将吾? どうしてここに?」
「それはこちらの台詞だ! 玲子殿はどこに居る!?」
「……玲子君なら、ここで羽織紐を選んでいるはずだったんだ。僕が少し席を外している間に、居なくなってしまったみたいで……」
「ふざけるな! お前が目を離した少しの間に、何かが起きたんだ!」
将吾の怒声に、尚文は唇を噛んだ。
「……すまない。本当に、すぐ戻るつもりだった。まさか、こんなことになるなんて……」
二人のただならぬ気配に、小間物屋の奥から、遠慮がちに店員の中年女性が顔を出した。
「あ、あの……お嬢様をお探しですか?」
二人がハッとして振り向く。
「知っているのか?」
「はい、さっき、別のご婦人がいらっしゃって……”身内です”って。お嬢様はちょっと驚いていた様子でしたけれど……手を引かれて馬車に……」
「相手の女は、どんな女だった!? 歳は? 背格好は?」
「えっと……ええと……四十代くらい、派手な着物で、髪を結い上げてて」
その特徴を聞いた瞬間、将吾の瞳に閃光のような鋭さが宿る。