明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
***
「さっさと、歩けよ」
馬車から乱暴に引きずり降ろされた玲子は、縄で縛られた両手を前に突き出したまま、つまずきながら歩かされた。
背中を押す手は荒々しく、振り返れば、粗野な男が獲物を追い立てるような笑みを浮かべている。
(どうして……どうして、こんなことに……)
心臓が早鐘を打ち、思考は霧の中のように混乱していた。
「ほら、この家だ。入れ!」
突き飛ばされるように足を踏み入れたのは、町はずれの荒れ果てた空き家だった。
土壁はところどころ崩れ、割れた窓から吹き込む風に、舞い上がる埃が喉を刺す。
ひんやりとした空気が漂い、どこか獣のような匂いがした。
縄を引かれ、畳の剥がれた床に転がされると、数人の男たちがにじり寄ってくる。
獲物を取り囲む獣の目。
いや、それ以上にいやらしく、濁った欲望の光を宿していた。
「あんたたち、この後は頼んだわよ」
その声に顔を上げると、戸口には百合絵が立っていた。
艶めかしい着物の裾を乱すこともなく、薄笑いを浮かべて玲子を見下ろしている。
「へえ、好きにしていいんですよね」
男のひとりが下卑た声で答えると、百合絵は頷き、口元に冷たい弧を描いた。
「いい気なものね、藤堂に庇われて、幸せそうに笑って。……でも、それも今日で終わりよ」
玲子は縋るように見上げた。
「……お義母様……どうして……」
「さっさと、歩けよ」
馬車から乱暴に引きずり降ろされた玲子は、縄で縛られた両手を前に突き出したまま、つまずきながら歩かされた。
背中を押す手は荒々しく、振り返れば、粗野な男が獲物を追い立てるような笑みを浮かべている。
(どうして……どうして、こんなことに……)
心臓が早鐘を打ち、思考は霧の中のように混乱していた。
「ほら、この家だ。入れ!」
突き飛ばされるように足を踏み入れたのは、町はずれの荒れ果てた空き家だった。
土壁はところどころ崩れ、割れた窓から吹き込む風に、舞い上がる埃が喉を刺す。
ひんやりとした空気が漂い、どこか獣のような匂いがした。
縄を引かれ、畳の剥がれた床に転がされると、数人の男たちがにじり寄ってくる。
獲物を取り囲む獣の目。
いや、それ以上にいやらしく、濁った欲望の光を宿していた。
「あんたたち、この後は頼んだわよ」
その声に顔を上げると、戸口には百合絵が立っていた。
艶めかしい着物の裾を乱すこともなく、薄笑いを浮かべて玲子を見下ろしている。
「へえ、好きにしていいんですよね」
男のひとりが下卑た声で答えると、百合絵は頷き、口元に冷たい弧を描いた。
「いい気なものね、藤堂に庇われて、幸せそうに笑って。……でも、それも今日で終わりよ」
玲子は縋るように見上げた。
「……お義母様……どうして……」