明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
「実はワシも庭いじりが、趣味なんだ。珍しい花を集めるのが楽しくてな。中には、薬にも毒にもなる草もあって、それもまた自然の妙味というものよ」
「……さようでございますか」
「ああ、そういえば、珍しいものを持って来たんだ。南蛮渡りの菓子だそうだ。花の世話ばかりでは味気ないだろう。気晴らしにどうだい?」
輝明が白い手袋をはめた指で、小さな箱を取り出し蓋を開けると、まるで宝石のような艶めく砂糖菓子が並んでいた。
輝明に差し出され、玲子は素直に手を伸ばした。
「美しいだろう。珍しいお菓子なんだ」
「まあ、宝石のようなお菓子……わたくし、初めて見ました」
「良かったら、食べてごらん。ボンボンは初めてかい? 美味しいよ」
「……はい」
玲子は戸惑いながらも、断るのは失礼に当たると悟り、小さな菓子をひとつ摘んだ。
その瞬間、ふわりと風が揺れ、玲子のすぐ脇に一将が現れた。
『待て!』
玲子は目の前にいる輝明の見張るような視線に気おされて、一将の声に気づかずに、菓子を口へと運ぶ。
「珍しいお菓子なんだ。美味いだろう?」
舌の上で溶ける感触は、甘い。
そして、カリッと噛むと中から、トロリと液体があふれる。
その液体は、リキュールなのだろうか。
お酒を飲みつけない玲子には、ナッツのような風味の中に、どこかえぐみのようなものを感じた。
『待てと申しておるのに……。礼を尽くすことと、魂を差し出すことは、まったく違うのだよ』
しかし、すでに菓子は玲子の口の中で溶け、唾液があふれ出す。たまらず、こくんと飲み込むと、胃の奥がカァッと熱くなった。
(……お酒を飲みつけないせい、ですよね)
玲子は心の中でつぶやいたが、一将は渋い顔をした。
『わしの目は、誤魔化せぬ。あやつが渡したその菓子、どうにも気に食わん』
「……さようでございますか」
「ああ、そういえば、珍しいものを持って来たんだ。南蛮渡りの菓子だそうだ。花の世話ばかりでは味気ないだろう。気晴らしにどうだい?」
輝明が白い手袋をはめた指で、小さな箱を取り出し蓋を開けると、まるで宝石のような艶めく砂糖菓子が並んでいた。
輝明に差し出され、玲子は素直に手を伸ばした。
「美しいだろう。珍しいお菓子なんだ」
「まあ、宝石のようなお菓子……わたくし、初めて見ました」
「良かったら、食べてごらん。ボンボンは初めてかい? 美味しいよ」
「……はい」
玲子は戸惑いながらも、断るのは失礼に当たると悟り、小さな菓子をひとつ摘んだ。
その瞬間、ふわりと風が揺れ、玲子のすぐ脇に一将が現れた。
『待て!』
玲子は目の前にいる輝明の見張るような視線に気おされて、一将の声に気づかずに、菓子を口へと運ぶ。
「珍しいお菓子なんだ。美味いだろう?」
舌の上で溶ける感触は、甘い。
そして、カリッと噛むと中から、トロリと液体があふれる。
その液体は、リキュールなのだろうか。
お酒を飲みつけない玲子には、ナッツのような風味の中に、どこかえぐみのようなものを感じた。
『待てと申しておるのに……。礼を尽くすことと、魂を差し出すことは、まったく違うのだよ』
しかし、すでに菓子は玲子の口の中で溶け、唾液があふれ出す。たまらず、こくんと飲み込むと、胃の奥がカァッと熱くなった。
(……お酒を飲みつけないせい、ですよね)
玲子は心の中でつぶやいたが、一将は渋い顔をした。
『わしの目は、誤魔化せぬ。あやつが渡したその菓子、どうにも気に食わん』