明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
どのくらいの時が過ぎたのだろうか。ようやく、玲子の呼吸が落ち着いてきたのを見て、将吾はそっと腕を解いた。
「落ち着いたか?」
「……はい」
「そばに居る。だから、安心して休め」
玲子を布団へと誘い、静かに寝かせる。
守りたい。心から、そう思った。
それはただの責任でも、家名のためでもない。
玲子という、たった一人の人間を。
将吾は、誰よりも大切にしたいと、強く、強く願ったのだった。
***
静かな夜、玲子は寝具に横たわり、額には冷えた手拭いがのせられていた。
蒸し暑さもなく、窓からは柔らかな夜風が入り込んでいるというのに、彼女の頬はほんのりと朱に染まっていた。
部屋には、将吾と、藤堂家がかかりつけにしている初老の医師だけがいる。
医師は脈を取りながら、静かに眉をひそめた。
「……熱は少しあります。それと、顔色と脈の乱れが……やや不自然ですな」
それを聞いた将吾は、医師に場所を移す事を提案した。
万が一にも玲子の耳に余計な話しを入れないためだ。
応接室のイスに、向かい合うように腰をおろすと、将吾はおもむろに話し出す。
「実は、昼間、菓子を一口食べた直後に、こうなりました。外見には異常がなく、南蛮からの輸入品だったそうです」
将吾は抑えた声で説明した。
医師は「うむ」と頷く。
「……なるほど、強い精油が使われている菓子のようですな。
恐らく、ごく微量ではありますが、興奮作用のある香草が含まれていたと見てよいでしょう」
「興奮作用……?」
「落ち着いたか?」
「……はい」
「そばに居る。だから、安心して休め」
玲子を布団へと誘い、静かに寝かせる。
守りたい。心から、そう思った。
それはただの責任でも、家名のためでもない。
玲子という、たった一人の人間を。
将吾は、誰よりも大切にしたいと、強く、強く願ったのだった。
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静かな夜、玲子は寝具に横たわり、額には冷えた手拭いがのせられていた。
蒸し暑さもなく、窓からは柔らかな夜風が入り込んでいるというのに、彼女の頬はほんのりと朱に染まっていた。
部屋には、将吾と、藤堂家がかかりつけにしている初老の医師だけがいる。
医師は脈を取りながら、静かに眉をひそめた。
「……熱は少しあります。それと、顔色と脈の乱れが……やや不自然ですな」
それを聞いた将吾は、医師に場所を移す事を提案した。
万が一にも玲子の耳に余計な話しを入れないためだ。
応接室のイスに、向かい合うように腰をおろすと、将吾はおもむろに話し出す。
「実は、昼間、菓子を一口食べた直後に、こうなりました。外見には異常がなく、南蛮からの輸入品だったそうです」
将吾は抑えた声で説明した。
医師は「うむ」と頷く。
「……なるほど、強い精油が使われている菓子のようですな。
恐らく、ごく微量ではありますが、興奮作用のある香草が含まれていたと見てよいでしょう」
「興奮作用……?」