明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
 そっと、玲子の指先を取る。
 柔らかなその手は、熱を孕み、今にも壊れてしまいそうだった。

「……大丈夫だ、玲子。俺がいる」

 低く、落ち着いた声で囁くと、玲子ははにかむように微笑み、身を寄せてきた。

 甘い香りが、ふわりと将吾を包む。

 玲子は、無意識だったのだろう。
 控えめに、しかし確かに、将吾の胸に額を預ける。

 その小さな重みを、将吾は両腕でそっと受け止めた。
 体に溜まった熱を逃すように、モジモジと足を擦り合わせる玲子の着物がはだけ、白い足が覗く。
 熱い息を吐きながら、潤んだ瞳で見上げられると、将吾の頬も赤く染まった。

「将吾さ……ま、わた……くし、体が……」

 どく、どく、と鼓動が高鳴る。
 腕の中の玲子が、可愛くて、愛しくて……たまらなかった。

 艶やかな唇に自分の唇を重ねたくなる。
 できるなら、このまま、玲子のすべてを知りたい。
 だが、誘惑に負けたなら、玲子を傷つけるだけだ。
 これ以上のことをしてはいけないと、必死に将吾は自分へ言い聞かせた。
 玲子が素面で、自分の意志で望んでくれるその日まで、絶対に。

 将吾は玲子の髪にそっと顔を埋め、耳元に優しく囁いた。

「……すぐによくなる。安心して、俺に預けていい」

 玲子は、微かに頷いた。
 そして、将吾の背中へ腕をまわす。
 それはまるで将吾の熱を欲しがるように……。

 将吾も答えるようにギュッと腕に力を入れ、抱きしめる。玲子から漂う甘い香りが、いっそう色を増し、濃く感じられた。
 己の欲望を胸の奥に押し込め、そのまま、しばらくのあいだ、静かに互いの温もりを分け合う。

 ただ、寄り添うだけ。
 それなのに、こんなにも甘く、愛おしい。

 (だからこそ、叔父の思惑にハマるものか。俺は玲子を守る)
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