明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
「麻黄……」玲子が息を呑む。将吾も、わずかに身を乗り出した。
「これ……分量が……」
「ええ、特別処方です。麻黄は、通常の倍量にて配合のご依頼がございました」
店主は帳面の欄に指を落とす。その動きに、玲子の胸が強く高鳴った。
「このご注文、藤堂家のご当主からの直接のものではございませんね」
「では、誰が?」
「ええと……」と店主が目を細めて読み上げた名に、玲子と将吾の身体が同時に止まる。
「藤堂輝明様より、との記録でございます」
ぴん、と空気が張り詰めた。あたかも時間が一瞬止まったかのようだった。
一将の霊が眉をひそめ、小さく呻くように呟いた。
『……あやつが、拙者の処方をいじっておったというのか……』
玲子はそっと唇を噛み、震える手をぎゅっと胸元にあてがう。その表情に、将吾は言葉を挟まず、ただ目で彼女の意思を受け取った。
「店主様、この記録──写しをいただけますか?」
一瞬、店主の目に驚きの色が宿ったが、すぐに神妙な面持ちで頷く。
「……もちろん、ご家中のこととあれば」
薬舗を出た後、将吾はしばらく無言で立ち止まり、茜色に傾きかけた空を仰いだ。
そして、ぽつりと呟く。
「……まさか、とは思っていた。だが、これで……確信に近づいたな」
玲子は、震える唇を引き結び、はっきりと頷いた。
瞳は迷いのない光を帯びていた。
すでに、あの頃の“守られるだけの令嬢”ではない。
「はい。……一将様の死の真相に近づいたような気がします」
「これ……分量が……」
「ええ、特別処方です。麻黄は、通常の倍量にて配合のご依頼がございました」
店主は帳面の欄に指を落とす。その動きに、玲子の胸が強く高鳴った。
「このご注文、藤堂家のご当主からの直接のものではございませんね」
「では、誰が?」
「ええと……」と店主が目を細めて読み上げた名に、玲子と将吾の身体が同時に止まる。
「藤堂輝明様より、との記録でございます」
ぴん、と空気が張り詰めた。あたかも時間が一瞬止まったかのようだった。
一将の霊が眉をひそめ、小さく呻くように呟いた。
『……あやつが、拙者の処方をいじっておったというのか……』
玲子はそっと唇を噛み、震える手をぎゅっと胸元にあてがう。その表情に、将吾は言葉を挟まず、ただ目で彼女の意思を受け取った。
「店主様、この記録──写しをいただけますか?」
一瞬、店主の目に驚きの色が宿ったが、すぐに神妙な面持ちで頷く。
「……もちろん、ご家中のこととあれば」
薬舗を出た後、将吾はしばらく無言で立ち止まり、茜色に傾きかけた空を仰いだ。
そして、ぽつりと呟く。
「……まさか、とは思っていた。だが、これで……確信に近づいたな」
玲子は、震える唇を引き結び、はっきりと頷いた。
瞳は迷いのない光を帯びていた。
すでに、あの頃の“守られるだけの令嬢”ではない。
「はい。……一将様の死の真相に近づいたような気がします」