明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
「……玲子殿」
 将吾の眼差しが鋭く細められる。
 次の瞬間、彼は卓の上に伸ばされた湯飲みに手をかけようとした。

 玲子の胸に稲妻のような恐怖が走る。
 喉の奥から思わず叫びが迸った。

「将吾様! そのお茶を飲んではなりませぬ!」

 広間の空気が凍りつく。
 分家筋の者たちが一斉に顔を上げ、驚きと戸惑いが入り混じった視線を玲子へ向けた。

 輝明は、わざとらしく眉をひそめる。
「おや……どういうことかね、玲子殿?」
 声は穏やかだが、その奥で黒い影がゆらりと揺れた。

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