明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
 輝明は続けた。

「将輝兄は表には出てこない。ならば、実質的に家を継ぐのは……兄の息子、君だ。将吾、お前が当主の孫として、藤堂の未来を引き継ぐ……」

 その声には、はっきりとした敵意が滲んでいた。

「だから、あの夜。舞踏会の場で、お前に毒を盛れば、すべては再び、ワシの手の中に戻ってくるはずだった。父が遺した選定の重みなど、帳消しにできると思った」

 将吾の目に、深い怒りが浮かぶ。

「祖父上は……叔父上が分家をする際に、不自由のないようにしたと聞いている。祖父上からたくさんの物を受け取っていたにも拘わらず、それ以上の物を欲しがり、自分の父親を、殺したのか⁉」

 輝明は一瞬だけ視線を逸らした。

「眠れぬ夜が続くと聞いたとき、ワシは、ふと思った。“薬を倍にしても、気づかれることはないのではないか”と……。ただ……その機会が、そこにあっただけだ」

 吐き捨てるようなその言葉に、まわりの空気が凍りつく。
 将吾は輝明を見据えた。

「そんな……身勝手な理由で」

 言葉の先を呑み込み、深く息を吸い言い放った。

「藤堂輝明、貴様が家督を継げなかったのは、その腐った性根のせいだ。おじい様は人の本質を見極めただけだ」
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