明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
「そうなんだよね。もし将吾があの葡萄酒を飲んでたら、毒で苦しんでたのは将吾で、毒を渡した“犯人”として僕が捕まってたわけだし」

 人目がある舞踏会会場での大胆な犯行は、毒殺だけが目的ではなく、同時に無実の者を犯人を仕立て上げることも可能だ。

「……つまり犯人は、俺を殺そうとしただけじゃなく、尚文を犯人に仕立て上げようとした。狙いは藤堂そのものか……」

「もしくは、僕たちが同時に潰れたことで、藤堂の当主の座が回ってくる誰か……傍系の可能性もあるな」

 ふたりの間に、にわかに張り詰めた空気が流れる。
 その傍らで、一将が玲子にだけ聞こえる声で、こそりと話しかけてきた。

『玲子殿……尚文と将吾、どちらかに嫁ぐとしたら、どっちが好みじゃ?』

 ……不意打ち。
 玲子はボッと音が出そうなぐらい一瞬で顔を真っ赤にし、内心で「むり、ムリ、無理!」と大パニックになりながら、ぶんぶんと首を横に振る。
 そんな玲子の反応に、一将はニヤニヤと満足そうだ。

『あはは、まことに愛らしき娘よ』
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