学園天国!!ホクロ様!!

戻ってきた艶ぼくろ

次の朝。
鏡の前で制服のボタンを留めていて、思わず声を失った。

「……戻ってる……」

鎖骨の下、昨日は消えていたはずの艶ぼくろが、くっきりとそこにあった。
指先で触れると、ちゃんと肌の一部になっている。

「なんで……?」

戸惑いを抱えたまま学校に行くと——予感どおりだった。

「イナ、大丈夫か!?」
「昨日、保健室に運ばれたんだろ?」

廊下に入った瞬間、また男子たちの声が飛んでくる。
昨日の静けさが幻みたいに、視線が集中していた。

さらに——
「イナ!こっちに」

理科室のドアから、倉田先生が顔を出した。
「落ち着けるように席を用意してある」

(むり!むり!!静かなのは一日だけだったー!)

イナは逃げるように走って教室へ入った。



昼休み。
「囲まれる前に……!」
弁当を抱え、イナは心を決めた。

人波に押し潰される前に、中庭で食べるんだ!
そっと立ち上がり、ドアへ向かう。

——が。

「え」

ドアの前に、人影が立ちはだかった。
見上げた瞬間、息が止まる。

「あ!いた!このクラスだったんだね」
昨日のバスケ部キャプテン、松本先輩が立っていた。

「探したよ。昨日、大丈夫だったか心配で」

心配そうな目に一瞬見とれてしまったそのとき——
「イナちゃん!一緒にお昼食べよう!」
「こっちの席空けといたから!」

クラスの男子が一斉に寄ってきた。

「心配ご無用!ありがとうございます!」

イナは松本先輩の腕を押して、人垣から抜け出すと、教室を飛び出した。



「はぁ、はぁ……」
必死に廊下を駆けるイナの横で、誰かがぴたりと並走した。

「ひっ!?」
横を見たら、松本先輩だった。

「先輩!?さすが……バスケ部……!」
足の速さも、持久力も別次元。



中庭にたどり着くと、マサキが待っていた。
「イナ!」と手を振ったけれど、その顔がすぐに変わる。

「……松本先輩?」

「うん……なぜか一緒に来た」
イナは息を切らしながら答える。

松本先輩はキラキラした笑顔を浮かべて立っていた。
(……持久力、半端ないなぁ)

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