それも、初恋。。
 中学の頃、橘に匂わせ告白をして、匂わせでフラれたっぽい女子たちが「でも今もメッセすると返してくれるし、ワンチャンあるかも」「やっぱ橘、性格良くて好き」と、諦めきれずにいる姿を何人も見てきた。

 ちなみに橘と仲が良かったせいで、私は橘のことが好きな女子たちから一方的に恋愛相談をされていたのである。

「いやぁ、橘のことは橘にしかわからないよー」と笑って断っても「聞いてくれるだけでいいから」と勝手に自分の気持ちを話し出すので、マジで聞くだけに徹していたが。

 私はほうっと溜息を吐いていた。
 
「そりゃ……野球部君、モテますわな。そんで女泣かせなヤツですな」

「そうなのよねぇ。私たちの頃って、告白に失敗すると告白された側があからさまに距離を置いたりすることも多かったから、そういうのが一切ないのがカッコいいなって、私も惚れ直しちゃった」 

 懐かしそうにふふっと笑う桜井さんの桜色に染まった頬が、心なしかつやつやしている。
 もしカナエちゃんと同クラだったら、私はカナエちゃんと友達になれただろうか。
 それとも。
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