それも、初恋。。
「あら、橘君は野球部で、泉ちゃんは美術部だったのね」
 そんなどうでもいい私の話を桜井さんがキラキラした瞳で聞いてくれる。

(しかも泉ちゃんって)
 桜井さんは、私をちゃんづけするのである。
 それを聞く度、なんていい人! と、思う。
 ちゃんづけに慣れてないので、おもいっきし照れるけど。

「ま、まあ、私のくだらない話は置いておいて、橘が言う通り、桜井さんって他の高齢者たちと雰囲気違いまくりですよね。文句ばっかな高齢者は論外としても、私のおばあちゃんとも違うって言うか……。うちのおばあちゃんもまるっとしててまあまあ可愛いおばあちゃんですけど、桜井さんは全然ベクトルが違う素敵さがあるっていうか……もしや、昔女優さんだったとかですか?」
「ええ??」
 桜井さんは目をまん丸にしてたっぷり驚いてから、ぷっと吹き出した。

「そんなわけないじゃない。ごくごく平凡な主婦でした」
「そうなんですか?」

「もちろんよ~。でも、そうね。もし私が他の人と違うように見えるとしたら……」
「見えるとしたら?」
「泉ちゃん、私の恋バナ、聞いてくれる?」

 そう言って桜井さんは可愛らしくウィンクをしたのだった。
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