雨の日の出会い
 九時五十分。祐希は智史と約束した場所に向かっている。普段の制服とは違って上が白、下が黒に分かれたカジュアルパーカーにデニムパンツを合わせた。財布は学生らしく肩から背負ったリュックに仕舞ってある。
 彼はどんな格好で来るのだろうか。会う時はいつもカッターシャツを着ていたが……と姿を思い浮かべながら歩いていると、駅で待つ彼が見えた。

 ――うわっ!

 智史は白ニットにロング丈の紺色ジャケット、黒いスキニーパンツという格好で立っている。正直とてもサマになっていて、思わず声が出てしまいそうになった。少し離れたところで呆然と見ていたが、祐希に気付いた彼が手を振っている。慌てて約束の場所まで駆け寄った。

「おはよう、天野くん」
「おはよ」
「今日はいつもと雰囲気違うね」
「そうかな? 川上さんこそ、いつもと雰囲気違って見……っ、その、似合ってると思う」

 見惚れた、と言いかけて咄嗟に言いかえた。恥ずかしいことを口走りそうになってしまい、穴があったら入りたい心境で俯く。そんな祐希の心を知ってか知らずか、智史は小さく笑って目を細めた。

「ありがとう。天野くんも似合ってるよ」
「っ?! あ、……えっと、ありがとう」

 まさか同じように褒められると思わず、しどろもどろで礼を口にした。祐希の頬が見る見る上気していく。彼にとっては何気ない一言だったかもしれないが、慣れない褒め言葉に嬉しさと気恥ずかしさが押し寄せる。

「さて、行こうか」

 レールの上を走る電車を見て、歩き出す彼に続いて歩を進める。振り返って空を見れば、今日は雲一つない晴天。太陽に照らされた祐希の心は楽しみと期待で弾んでいた。
< 6 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop