サイコロ・エッジ
序章

借金まみれの生活

夕焼けがコンビニのガラス窓を赤く染める。

閉店作業を終えた俺、智司はレジ締めの数字を見つめたまま動けずにいた。



今日の売り上げは29,875円。

時給1,000円のバイト代を計算しても月収15万にも満たない。

そこから家賃6万、光熱費1万5千、最低限の食費──残るのはいつも数万円だけだった。



スマホが震える。

メールの通知音だ。


『佐竹さんからです→明日の20時までに残債450万円を全額返済してください。不可能な場合は……ご存知ですね』


指が震えた。


高校時代のツケから始まった借金地獄。

パチンコで雪ダルマ式に膨らんだ額面。

そして今、債権者は佐竹という者に変わっていた。


元々取り立ては「顔が怖いだけの中年親父」だったのに、半年前から冷徹な弁護士風の男・佐竹が現れるようになったのだ。


「智司くーん?まだ?」


店長の声が飛んでくる。

時計は午後11時半を回っていた。


「すみません!すぐ上がります!」


慌てて制服を脱ぎながら頭の中で計算する。

給料日前なのに明日が支払期限。


無理だ。

絶対に無理だ。
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