顔も知らない結婚相手に、ずっと溺愛されていました。




 「じゃあ行ってくるね、千代ちゃん」

 「……いってらっしゃい、冨羽さん」

 「帰ったら絶対に昨日買ったゲーム一緒にしようね!」

 「ふふっ、はい。楽しみにしています」



 いつものように冨羽さんを玄関先まで見送る。

 遠くなっていくその背中に寂しさを覚えてしまうくらい、私は彼のことを愛してしまっている。



 「(どう、しよう……)」

 父が定めた顔合わせの日まで、あと三日。

 何がなんでも両家の顔合わせに連れていくと言っていた父が、これから何をしてくるのか考えるだけで怖くなった。



 この幸せが、ずっと続いて欲しい。

 脆く儚い私のこの願いが叶うことなんてないと心のどこかでは分かっていても、そう願わずにはいられないほど今の生活を手放したくなかった。

 そう強く願えば願うほど、終わりの日が近づいているというのに──。




 一人寂しくリビングへ戻ると、冨羽さんを送ったばかりの玄関がガチャリと音を立てて開いた。

 「(……忘れものかな?)」


 私は再び玄関へ行こうと立ち上がったとき、そこへ現れたのは見知らぬ一人の女性だった。

 心臓が不穏な音を立てた。


 「やっぱり!女だと思ったのよね!」

 「……っ」

 「アンタ誰なの!?」






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