学問と恋愛のはざまで
2章進展の始まり
久瀬サイド

今日は放課後、図書室で数学の補習だ。
柚はいつものようにノートを広げ、眉をひそめて問題に取り組んでいる。

「ここはこう考えればいい」
声をかけると、彼女は真剣に目を見開き、メモを取る。

――なんだか、いつもより手のひらが熱い。
いや、気のせいだ。集中してるだけだ。

ふと、ペンを落とした柚が床にしゃがんで拾う。
「ありがとうございます!」
彼女の笑顔が、ちょっとだけ眩しい。

胸が……ほんの少し弾んだ気がする。
けど、これは「勉強を頑張る彼女を見た喜び」だ。きっとそうだ。

柚サイド

久瀬くんに教えてもらいながら、問題を解いていく。
今日はちょっと複雑な問題で、集中しすぎて手が震える。

「ここは……えっと……」
言葉に詰まって目を上げると、久瀬くんが静かに、優しく見ていた。

――なんだか、胸が……跳ねる。
でも、これは単なる緊張だ。うん、そうだ、緊張してるだけ。

ふと、ペンを落としてしまった。
久瀬くんがすぐに拾って渡してくれる。
「ありがとう……」

胸が少し高鳴る。自分でも理由はわからない。

「お、今日も一緒に勉強してたな。顔、ちょっと赤くね?」
「……してない!」と二人は否定する。

でも田村と川端は、二人の視線のやり取りや、ペンを渡す時の手元の距離の微妙さを見逃さなかった。
「……こいつら、絶対ちょっと意識してるな」

本人たちは気づかず、ドキドキすら自覚していないが、友人たちは察してヤキモキする。
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