私は‪✕‬‪✕‬を知らない I
「ス、スリーポイント・・・!」


誰かの言葉を合図に周りの音が一斉に大きくなる。


す、凄い!やっぱりバスケも上手だったんだ!
だけどなんでさっきまで動かずにいたんだろ・・・。


「あーあ、あの子ったらまた損な役を買って」


「わっ!り、理事長・・・」


「貴女いつになったら慣れるわけ?」


「す、すみません・・・」


だったらその登場の仕方やめてください、とは言えないんだよなぁ。


「仕事に戻ったのでは?」


「またましろさんが種目に出ると聞いて大急ぎで終わらせて来たんですよこの人。毎回こうだといいんですがね」


「生意気よ篠宮」


足蹴りしようとする理事長を篠宮さんは難なくあしらう。いつもこういうやり取りしてるんだろうなぁ。


でも損な役って一体どういうことなんだろう。


理事長の横顔をじっと見つめていれば見すぎよと言われてしまう。


「そんなに気になる?」


あれ、あたし声に出してたっけ。けど、


「・・・はい」


その答えの方がよっぽど大事で。


「ふーん、考えても分かんない?それでも貴女、姫なの?」


呑気に教えてくれるんだろうなって思ってた。


ましろちゃんの事が好きって分かってたから。
けど、それがあたしに対しても優しく接する理由になんてならないのに。
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