私は‪✕‬‪✕‬を知らない I
その視線と言葉が向けられたと同時に体が固まってしまう。


「貴女、お飾りのお姫様になるつもり?」


さっきまで色んな音や声が聞こえてたはずなのに、理事長の声だけが聞こえる。嫌な感覚だ・・・。


心臓がバクバクうるさい・・・。苦しささえも感じはじめて胸元を抑える。


「はっ・・・ぁ、」


あれ、


息って、


どうやるんだっけ?


「そこまでにしろ」


「!」


朔夜くんの声で弾けたように周りの音が戻る。


「おいたが過ぎますよ」


「だって最近のましろこの子の事ばっかで構ってくれないんだもん」


「こんな事してましろさんに嫌われたら本末転倒じゃないですか」


「大丈夫か?」


篠宮さんが理事長を叱る横で朔夜くんが心配そうな顔で覗き込む。今の朔夜くんはなんともないのかな・・・。


大丈夫と返した呼吸を落ち着かせる。


「さっきの、傍から見たらどう映ると思う?」


叱られたせいか不貞腐れたように頬に手を付きながらましろちゃんに視線を向ける理事長。


さっきの・・・?


えっと・・・、


「体良く言えば優里ちゃんの声に応えたように見えるけど」


「何も考えず言えば優里さんの声にしか興味のない、まるで────」


「番犬?みたいだよねー」


何、それ。


なんでそんな事・・・。


「あの子大切な子には素でやってのけちゃうのよね。何も考えず尽くしちゃって。単純に貴女の言うことしか聞きたくないのもあるだろうけど、こうすることで軽い気持ちで貴女に被害が行かないようにしてるんでしょ」
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