私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

5章.同族嫌悪

「あっつ・・・」


口の中で飴を転がしながら日差しから顔を隠すようにフードを深く被り直した。


球技大会もなんやかんやありながらも終了し、中間試験も終えた6月。


金曜日に学校から帰宅した後情報屋の仕事に追われ先程まで部屋にこもっていた私はある事に気づいた。


(食べ物が、ない)


残っていたのは今舐めている飴と僅かな茶葉。


こうして今、重たい腰を上げて近くのコンビニまで来ていると言う訳だ。





扉を通ればいっきに冷房の効いた空間が私を迎えてくれる。


ここは天国か?


カゴを手にいつも食べている飴とカロリーメイトを何個か入れてレジへと向かおうとするが、サラダが目に入る。


「・・・」


サラダを1つ手に取り、それもカゴに入れた。


別にあいつらに食べるよう言われたからじゃない。


今の空腹の状態ならこれも入るだろうなと思っただけだ。


「あれ、綾波?」


「あー!ほんとだっ!」


レジに向かう途中で入口の方から声を掛けられてしまい渋々その声がする方へ視線を向ける。


おやまぁ、全員お揃いですか。


こちら目掛けて勢いよく抱きつこうとする優里に合わせてカゴを避ければそのまま強い力で抱き締められる。


まさか休日でもこの怪力を味わうことになるとは。
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