私は‪✕‬‪✕‬を知らない I
私が傍にいるから、ってね。


理事長はそう続ける。


ましろちゃん、あたしそんな事望んでないよ。


あたしはましろちゃんの友達になりたくて、ただ、対等で居たいだけなんだ。


けどましろちゃんをそうさせるのはあたしが弱いからだよね。


「あたしはましろちゃんの友達です。そんな守られるだけなんて嫌、です・・・。そんなの、対等じゃない」


理事長に言うのは可笑しいかもしれないけど、宣言するように目をしっかり見て言葉にした。


「あら、そういうところも似てるのね」


冷たい空気は無くなって、ましろちゃんに向けてたような笑みを浮かべる。でもちょっと違うような?


懐かしさを感じてるような笑顔だった。


「はい、絶対胸を張ってましろちゃんの友達だって言えるようになります。どれだけ時間が掛かってもっ」


「そう、期待はしておくわ。あの日の判断が間違いではないって思わせて?」


去り際にあたしだけに聞こえるように、





のんびりしてる余裕はないから、お願いね。





そう言って今度こそ帰ってしまった。


残した言葉の意味は分からないまま、ましろちゃんにタオルと飲み物を渡しにコートまで向かう。


「お疲れ様さまましろちゃん」


「ええ、ありがとうね」


大切に思っているのはましろちゃんだけじゃないから。


先程の言葉を決して忘れたりしないように心に刻んだ。

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