魔法で恋を操る女になった私は、すべてを奪った帝国に復讐する

7話  闇より目覚めよ、傾国の魔女

 その時だった。背後で、枯葉を踏みしめる音。

 振り返った瞬間、黒衣の男たちが現れた。

 手には短剣。目は、殺意で濁っていた。

 「‥‥‥‥追手?」

 逃げなければ、殺される。

 そう理解するより早く、私は森の奥へと駆け出していた。

 枝が頬を裂く。足元の根が転ばせようと絡みつく。

 心臓が痛いほど脈打ち、息がうまく吸えない。

 なぜ。

 なぜここまでされなきゃいけないの?

 私は何もしていない。ただ、彼の隣にいただけ。

 ただ、好きになっただけ。

 それが、そんなに罪だったの?

 怒りと絶望が胸の奥でごちゃ混ぜになって、涙があふれて止まらない。

 追ってくる足音が、すぐ後ろまで迫ってきている。

 「アレクシス」

 名前を呼んだその瞬間、足を滑らせ、地面が消えた。

 視界がぐるりと反転し、私は崖の縁から、空へ――闇へと落ちていった。





 落下の衝撃は、不思議なほど痛みを伴わなかった。

 風の音も、地面の冷たさも、遠くに霞んでいく。

 ただ指先――アレクシス先輩から託された指輪だけが、熱を持って燃えるように脈動していた。

 朦朧とした意識の中で、それが光を放った。

 まばゆい銀の光が、私の身体を包んだ。

 どこかで聞こえた、女の声。


 =選ばれし者よ。汝の悲しみ、怒り、すべてが力となる。我を受け入れよ=



 視界が白く塗りつぶされ、そしてゆっくりと、意識が戻っていった。
 
< 7 / 19 >

この作品をシェア

pagetop