転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「そうですわね。
 大事な話ですもの、きちんとお互いの顔を見て話せるならその方がいいですわ」

「では、早速」

 青年が片手をひらりと動かして、風魔法を発動させると、私たちの体はふわりと宙に浮かび上がり、そのまま窓から室内へと戻った。

「魔法がお上手ですのね」

 私は水魔法が少し使えるくらいなので、ちょっと羨ましい。

「私は第二王子殿下の護衛騎士をしておりますから、これくらいはできて当然なのですよ」

「まぁ、それは」

 すごいですね、と言おうとして、さすがの私も絶句した。

 魔法具の放つ光のおかげ夜でも明るく照らされている室内で、真正面から見た青年の顔があまりに美しかったからだ。
 エメラルドの瞳に、すっと通った鼻筋をした白皙の美青年だ。
 暗闇でも輝いていた金髪は、今は本物の黄金のように輝きを放っている。

「申し遅れました。
 私はヘンリック・フューゲルといいます」

 フューゲル……って、フューゲル侯爵家⁉
 複数ある侯爵家の中でもかなり家格が高かったはずだ。
 かなりの高位貴族ではないか!
 
 見目麗しいだけでなく、王族の護衛騎士ができるくらい腕が立つ騎士で、さらに侯爵家という属性まであるなんて、それってまるで恋愛小説のヒーローみたいじゃないか。
 むしろ、そうだったとしても完璧すぎて陳腐な設定になってしまいそうだ。

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