転生小説家の華麗なる円満離婚計画

「契約結婚?」

「そうです!」

 首を傾げる青年に、私は自信満々で大きく頷いた。

「バルテン王国では、結婚して三年間子ができなければ離婚できるという法律があるのはご存じですね」

「ええ、それはもちろん」

「その法律を利用して、三年後に離婚をするという契約を内々に結んだ上で、結婚をするのです。
 もちろん、三年以内にお探しの女性が見つかったら、どうにか理由をでっち上げて私有責で離婚してくださって構いません。
 どこかの修道院に送ったことにでもしてくだされば、後は自分でどうにか生きていきますから」

「いや、しかし……そんなことをして、あなたに利益があるのですか」

「ありますとも。
 少なくとも、母と弟をギャフンと言わせることができます!」

「ぎゃふん……」

「私は、今夜のことでほとほと家族に愛想が尽きました。
 以前から折を見て出奔でもしようかと思っていたのですが、それでは芸がないので、他の手段を探していたんです。
 身持ちの悪い性悪女のはずの私が望まれて結婚するだなんて、誰にも予想できないと思いませんか?」

「それは、そうかもしれませんが……」

 青年は、逡巡しているような仕草をした。

「正直なところ、あなたの提案には心惹かれるものがあります。
 私も周囲からの結婚しろという圧力には、心底うんざりしていますからね。
 ですが、ここは暗くてお互いの表情がよく見えない。
 あの部屋に戻って、詳しい話をしませんか?」

 青年は、窓があけ放されたままの二階の部屋を指さした。

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