転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「女性にそんな声を出されたのは初めてですよ」

 それなのに、彼はエメラルドの瞳に好奇の光を宿し、私が退いてできた距離を縮めてくる。

「ひぃっ⁉ な、なにをなさるのです⁉」

 私が下がると、彼が前に踏み出す。
 それを避けようとさらに下がると、また彼が近づいてくる。

 それが続いて、ついに私は壁際まで追い詰められてしまった。

 壁に背中をぺたりとつける私の両脇に彼は手をつき、いわゆる壁ドンをされている状態になった。
 怪しく光るエメラルドの瞳が、冷や汗をかく私を見下ろしている。

 怖い! イケメン怖い‼

「さ、触らないでぇ! でないと、そこの男みたいにしてやるんだからぁぁ!」
 
 私が震えながら指さしたのは、弟と共謀して私を襲おうとした男だ。
 すぐ近くでこんなに騒いでいるのに目が覚める気配もなく、床にぐんにゃりと伸びている。

 指一本でも私に触れたら、このイケメンも床と仲良しにさせてやる! と身構えつつ、涙目でエメラルドの瞳を睨みつけた。

「……ふふっ」

 私はぷるぷる震えながら怯えているというのに、イケメンはなぜか笑い始めた。

「ふふふ……レディは面白いですね」

 どうやら、怯える私が面白かったらしい。

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