転生小説家の華麗なる円満離婚計画
㉒
大きな黒い翼が羽ばたき、風を巻き起こすと同時に魔力を振りまいた。
黒い靄の粒子は私たちを取り囲み、渦を巻くように回転を始めた。
これで、渦の内部にいる私たちの姿は外から見えなくなり、声すら届かなくなったのだ。
「さて。エル、お願い」
「ああ」
エルヴィンは私の手を離すと、床で震えているカリナの頭をガシッと掴んだ。
「どう?」
「……いけそうだ」
「そう。よかったわ。
じゃあ、最後のお別れを言わなくてわね」
エルヴィンに猿轡を外されると、カリナは元気に喚き始めた。
「いったい、なんなのよ⁉ あんたたち、何者なのよぉ!」
私はカリナを見下ろしながら、会心の笑みを浮かべた。
「私、前世の記憶があるの」
「はぁ? だったらなんなのよ!」
「前世の私の名は、松島紫」
「え?」
「あなたが酒好きなのに男性の前ではカシスオレンジしか飲まないことも、たいして可愛がってもいない実家の猫の写真をスマホの待ち受けにしていたことも、男性にだけお土産を配ることも、よく覚えてるわ」
カリナの顔色が変わった。
黒い靄の粒子は私たちを取り囲み、渦を巻くように回転を始めた。
これで、渦の内部にいる私たちの姿は外から見えなくなり、声すら届かなくなったのだ。
「さて。エル、お願い」
「ああ」
エルヴィンは私の手を離すと、床で震えているカリナの頭をガシッと掴んだ。
「どう?」
「……いけそうだ」
「そう。よかったわ。
じゃあ、最後のお別れを言わなくてわね」
エルヴィンに猿轡を外されると、カリナは元気に喚き始めた。
「いったい、なんなのよ⁉ あんたたち、何者なのよぉ!」
私はカリナを見下ろしながら、会心の笑みを浮かべた。
「私、前世の記憶があるの」
「はぁ? だったらなんなのよ!」
「前世の私の名は、松島紫」
「え?」
「あなたが酒好きなのに男性の前ではカシスオレンジしか飲まないことも、たいして可愛がってもいない実家の猫の写真をスマホの待ち受けにしていたことも、男性にだけお土産を配ることも、よく覚えてるわ」
カリナの顔色が変わった。