転生小説家の華麗なる円満離婚計画

「それで、これがレディを襲った男なわけですか」

 彼は汚物を見るような目で床にうつ伏せになり昏倒したままの男に向けると、ブーツの爪先を男の体に引っ掛けて仰向けにひっくり返した。

 凛々しい形の眉がぐっと寄せられ、不快であることを表す。
 このレベルの美貌だとこんな表情ですら絵になるのか、と無駄に感心してしまった。

「フローエ公爵家の次男ですね。
 この男は、正真正銘身持ちが悪いので有名なんです」

 フローエ公爵家というと、先代国王の妹が降嫁した家だったはずだ。
 この男もかなりの高位貴族なようだ。

「邪魔なゴミは外に捨ててしまいましょう。
 その前に、一発くらい殴っておきますか?」

 王族に連なる血筋の高位貴族の令息をゴミ扱いする彼に、私は首を横に振った。

「やめておきますわ。
 こんな男、触るのも嫌ですもの」

「同感です」

 彼がまたひらりと手を振って風魔法を発動させると、男の体が浮き上がってふわふわと窓の外へと移動していった。

「では、先ほどの『契約結婚』についてですが、もう少し詳しく伺っても?」

「ええ、もちろんですわ」

 私は真剣な顔で彼に向き直った。

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