転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「あなたたちは、今日から私のものにするわ!
 こっちにいらっしゃい!」

 艶やかな銀髪の可愛らしい女の子だった。
 マリアンネと同じ澄んだ紫の瞳には、はっきりと俺たちを気遣う色がある。
 この女の子は、俺たちを憎んではいないようだ。

 そう思った俺は、女の子に手を引かれるままについていき、そこで俺の直観は正しかったことがわかった。
 
 クラリッサという名のお嬢様は、俺たちを家族だと言い居場所を与えてくれた。
 それだけでなく、俺たちに勉強や鍛錬をする機会までくれて、本当に家族として扱ってくれた。

 可愛くて優しくて聡明なお嬢に、俺が特別な感情を抱くようになるのは、引き取られてすぐのことだった。

 マリアンネはお嬢の異母妹だが、俺とお嬢は他人だ。

 そんな俺だからこそ、お嬢と本当の家族になる方法がある。

 きっと、いつか……そう思いながら、俺はお嬢の隣に立つのに相応しい男になるために励んでいた。

 それなのに、俺が無力だったせいで、お嬢とマリアンネを危険に晒してしまった。

 結果として魔法が使えるようになったが、俺の心には深い後悔が残った。

 突然姿が変わったことにパニックを起こした俺を宥め、落ち着かせたのはお嬢だった。
 もしあの姿を他人に見られていたら、俺は実験動物にされていたかもしれない。
 俺は、またお嬢に助けられたのだ。

 あんな異形の姿を見たのに、お嬢は俺を全く怖がることなく、それまでと変わらず接してくれた。

 そんなお嬢を守るためにと密かに訓練を重ね、俺は膨大な闇属性魔力を自在に使いこなせるようになった。
 かなり大変だったが、お嬢とマリアンネを守るためだと思えば頑張れた。

 俺に秋波を送ってくる女もいたが、お嬢以外の女には少しも食指が動かなかった。
 
 俺の胸を熱くするのは、お嬢だけなのだ。

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