転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「いらっしゃいませ、ヘンリック様。
 お待ちしておりました」

 馬車から降りてきたヘンリックを出迎えると、エメラルドの瞳が驚いたように見開かれた。
 昨夜の夜会用に着飾った私と今の私では大きく印象が異なるから、無理もない。

「昨日以来ですね。
 陽の光の下で見るクラリッサ嬢も美しい」

 それでも、すぐにこんな歯の浮くようなセリフを返してくるあたり、さすがだと思う。
 そして、こんなセリフすら様になってしまうのだから、顔がいい男というのは得なものだ。

「まぁ、お上手ですわね」

「本当のことですよ。
 きみの前では霞んでしまいますが、我が家の庭で一番美しい花をお持ちしました」

 差し出されたのは、薔薇とガーベラの可憐な花束だった。

「わぁ、きれい! ありがとうございます!」

 一番美しいのはヘンリックの顔だと思いつつ、私は花束を受け取った。
 きれいな花束を贈られるのは、単純に嬉しい。

「中へどうぞ。
 私の部屋にご案内いたしますわ」

 私は自然に差し出された手をとりエスコートを受けながら、私室へと向かった。
 通常、来客はサロンか応接室に通すものだが、今回のヘンリックの訪問はそれだと都合が悪いのだ。
 ヘンリックもそれを察したらしく、黙ってついてきてくれた。

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