転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「お帰りなさい、リック」

「ああ、ただいま」

 彼はとろりと蕩けるような眼差を向けながら、慣れた仕草でマリアンネの腰を抱き寄せ、ストロベリーブロンドにキスを落とした。

 もう一度言うが、ヘンリックは私の夫だ。

 それなのに、彼は私の目の前で堂々と私の妹を抱き寄せている。

「おや、なんだかご機嫌なようだね。
 もしかして、リサの原稿が仕上がったのかな?」

「そうなんです!
 今回のも、すっっっごく面白いんですよ!」

 私の夫に抱き寄せられたまま、私の妹は瞳を輝かせる。

「ヒーローのブルーノが、ヒロインが働いている教会を訪ねていって」

「待って待って、マリア。僕も読むのを楽しみにしてるんだから」

「あ、ごめんなさい」

 興奮のままにうっかりネタばれしようとした自分の口を、マリアンネは慌てて押さえた。

「今は俺が読んでる途中だから、後でリックにまわすよ」

「まだ締め切りには余裕があるの。時間がある時にゆっくり読んだらいいわ」

「ありがとう。そうさせてもらうよ」

 エルヴィンと私にも、ヘンリックは笑顔を向ける。
 マリアンネに対するような甘い笑顔ではないが、信頼に満ちた穏やかな笑顔だ。

 マリアンネとエルヴィンだけでなく、ヘンリックも私の小説の読者で、大切な家族なのだ。
 三人とも、編集担当よりも早く私の作品が読めことを『家族の役得』だといって喜んでいる。

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