転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 エルヴィンはヘンリックに手を差し伸べ、ヘンリックは素直にその手をとって立ち上がった。

「きみはもっと強いじゃないか!」

「私はお嬢とマリーを守らなくてはいけませんから。
 そのために強くなったんです」

「私だって、これからはマリアを守る!」

「マリーだけですか?」

「もちろん、クラリッサもだ。
 私の協力者で、マリアに会わせてくれた恩人なんだからな」

「なら、もっと強くなってください。
 少なくともこの程度では、マリーの夫として認めることはできません」

「望むところだ! もう一度勝負!」

 エルヴィンに発破をかけられたヘンリックは、気合いとやる気を漲らせてまた木剣を構えた。

 養子とはいえ侯爵家令息で立派な騎士なのに、平民のエルヴィンに負けてもヘンリックはへそを曲げることはなく、純粋に結果を受け入れた。
 
 少しハラハラしたが、彼が真っすぐな気性をしていることが改めてよくわかる出来事だった。

 そう思ったのはエルヴィンとマリアンネも同じだったようで、その時を境に二人のヘンリックに対する態度は以前よりも柔らかいものとなった。


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