転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 ヘンリックはマリアンネを口説き、本を読み、エルヴィンと鍛錬をして、とても有意義な結婚休暇を過ごした。
 美味しい食事をたくさん食べたこともあり、休暇明けにツヤツヤした顔で出勤してきた彼に、第二王子殿下と同僚の近衛騎士たちは「ヘンリックが奥方に骨抜きにされた」とヒソヒソしていたのだそうだ。

 実は、私が彼を脅して無理矢理結婚にもちこんだという噂もあったのだが、明らかに顔色がよくなった彼の様子に、すぐにその噂は消え去った。
 
 そうなると、興味津々な貴族たちから私にお茶会や夜会の招待状が次々と届くようになったが、「妻は病弱なので」ということでヘンリックが全て断ってくれた。
 私としても社交になんか興味はないので、新居に引き籠って快適に過ごしていた。

 こうして、なんだか奇妙なことになってしまった新生活に、私たちはすんなりと馴染んでいった。

 それもこれも、ヘンリックが外見だけでなく中身もイケメンだったからだ。

 一緒に鍛錬するからか、最初に彼と仲良しになったのはエルヴィンだった。
 木剣だけでなく短剣をつかったり、素手でレスリングのようなことをしたりと、庭でじゃれあっている間にいつの間にやらエルヴィンの敬語が消えていた。

 ヘンリックは身近なところで気軽に接することができる友人ができたのが嬉しかったようで、

「私のことはリックと呼んでくれ! 敬語もいらない!」

 と、私たちに言うようになった。
 
「あなたがそれでいいのなら、そうさせていただくわ。
 じゃあ、私のことはリサと呼んでね」

「リサ、だね。リックとリサで、なんか語呂がいいじゃないか」

「ふふふ、そうね。一応、対外的には夫婦だものね」

 私と彼も気の置けない友人になるのに時間はかからなかった。

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