転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 男性の声には面白がるような響きがあったが、弟の行いに愚痴を言いたくて仕方がなかった私は、全部ぶちまけることにした。

 私の両親は政略結婚で、互いに愛情は欠片もない。
 それでも義務として母は父の子を産んだわけだが、残念ながら第一子である私が男でなかったため、母はもう一人産まなくてはならなくなった。
 この時点で母の私への愛情はほぼ消滅してしまったようだが、それに拍車をかけたのが私の容姿だ。
 私は父の母にあたる祖母、つまり母からしたら姑によく似ているのだ。
 祖母は厳格だっただけで、嫁いびりをしていたわけではないらしいが、自分に甘いところがある母は祖母のことを恨んでいた。
 父も私に無関心だから、しかたなく祖母が面倒をみてくれていたそうで、それも母が私を嫌う理由となってしまった。
 そして、私の二歳下に弟ヨーゼフが生まれ、母は後継を産まなくてはいけないという重圧から解放されると、私には目もくれず弟だけをひたすら溺愛するようになった。
 その頃には祖母は病に臥せっていて、父ももう母と子作りする必要はないとほとんど家に帰ってくることはなく、私はほぼ使用人たちに育てられた。
 母が私を嫌うから、当然ながら弟も私を嫌うようになり、顔を合わせると罵ってきたり髪を引っ張ったりする意地の悪い性格に育った。
 私が年頃になると、母と弟は二人して私が身持ちの悪い性悪女だと吹聴するようになったから、私の社交界での評判は最悪だ。
 夜会でもお茶会でも、私は遠巻きにされるばかりで、誰とも親しくなれないので、普段は家に引き籠っている。
 それなのに、今回の夜会はどうしても出なくてはいけないと言われ、わざわざ新しいドレスを私に仕立ててまで連れてこられたのだ。
 
「会場に着いてすぐ、ダンスホールではなく控室のある区画に連れてこられて、さっき飛び降りてきた部屋に押し込まれました。
 そこで知らない男が待ち構えていて、私を襲ってきたのです」

「……酷いことを……」

 男性の声には憐憫が滲む。
 こんな暗がりで聞かされた身の上話にも同情してくれるなんて、どうやら悪い人ではないようだ。

「それで、あなたは大丈夫だったのですか」

「ええ、無事ですわ。
 護身用の魔法具を持っていますから」

 私の魔法具は、私が魔力を流すと私に触れている相手を即座に昏倒させるという効果がある。
 一般には出回っていない、特注品の魔法具なのだ。
 こんな高価なものを私が持っているなんて、弟は予想もしていなかっただろう。

「私を傷者にして、妾か後妻としてどこかに売りつけるつもりなのだと思います。
 私を襲ってきた男からもお金を貰っているでしょうから、一石二鳥ですわね」

「……」

 よく見えないが、かける言葉もないというような顔をしているのだろうということが伝わってくる。

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