転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 私とエルヴィンとの距離を縮めるのと同時進行で、ヘンリックはマリアンネの攻略も着実に進めていた。

 賢い彼は、私の小説をダシとして大いに利用した。
 語りだしたら止まらないマリアンネに蕩けるような笑顔を浮かべながら耳を傾け、小説の中に登場するお菓子や花などをプレゼントするなどして、少しずつ距離を縮めた。
 最初は戸惑うばかりだったマリアンネも、強引なことは一切せず、指一本触れることなく、明らかに熱のこもったエメラルドの瞳で見つめてくる美貌の貴公子に次第に絆されてしまったのも無理はないと思う。

 そんな二人を私とエルヴィンは口を挟むことなくじっと見守り、ついにマリアンネがヘンリックを受け入れると四人だけでお祝いのパーティをした。 

 家に帰ると愛しい恋人がいて、美味しい食事があって、一緒に鍛錬ができる友人がいて、面白い小説を出版前に先読みできる。
 元から美しかっただったヘンリックだが、私生活がものすごく充実したことでさらに美貌に磨きがかかり、本当に内側から発光しているかのようなキラキラ貴公子になった。
 騎士としての腕も研ぎ澄まされ、第二王子殿下を襲撃した賊をほぼ一人で討ち取って勲章を授与されたりもした。
 
 私のほうも、面倒な家族から解放されたことで、以前より創作に集中できるようになった。
 ヘンリックは騎士としての経験と知識から、アドバイスや創作のヒントをくれることも少なくない。
 そこから着想を得て手がけた新作は過去最高の売上を記録し、やがてユカリ・シキブの代表作といわれるようになった。 

 マリアンネは初めての恋人に甘やかされて、隠す必要がなくなった素顔になんだか艶がでてきた。
 幸せそうに寄り添う二人は微笑ましくて、そんな二人を見ると私とエルヴィンも自然に笑顔になった。
 
 以前は私とマリアンネのためだけに生きているような感じだったエルヴィンも、キルステン伯爵家から出たことで気持ちに余裕ができたようで、表情が柔らかくなった。
 心根が真っすぐな友人と、たまに男二人だけで酒を酌み交わしたりしている。
 
 私たち四人はお互いに助け合い支え合い、とてもいい関係を築いていた。

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