転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「珍しくはあるが、それだけでは聖女の称号には足りない。
 功績か実績か、そういうのが必要なんだ」

「回復魔法が使えるんなら、そう難しくはなさそうだけど」

「そうでもない。
 我が国にはアブラッハがあるからな」

 ああそうか、と私は納得した。

 アブラッハの実による回復効果は絶大なのだ。
 だから、せっかくの回復魔法もあまり出番がなくて、功績を挙げる機会がないのだろう。

「とはいえ、回復魔法が有用であることに違いはない。
 聖女の称号がほしいなら、いくらでもやりようはあるはずだ。
 それなのに、あの女は……どうもその方向の努力をする気がないようなんだ」

 ヘンリックのエメラルドの瞳が困惑に揺れた。

「あの女は他の世界から来たと言っていたが、最初からアブラッハのことを知っていた。
 アブラッハだけでなく、第一王子殿下を初め数人の……そろいもそろって顔のいい男ばかりの名を知っていた」

「もしかして、そのなかにリックも含まれてるの?」

「……ああ、私のことも知っていた。
 ただ、どういうわけか、私がヤミオチとかいうのをしていないと言って、大層驚いていた」

 ヤミオチ……闇落ち、か?

「なんでも、私はルーカス様を守り切れず死なせてしまって、それが原因でヤミオチしているはずだったんだそうだ」

 ルーカス様というのは、ヘンリックが護衛騎士として仕えている第二王子殿下のことだ。

「殿下はご健在よね?」

「ピンピンしてる。
 病気も怪我もしてないし、これからも死なせるつもりはない」

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