転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 なんとも奇妙な話に、私たちは首を傾げた。

「それから、コンラート第一王子殿下は、亡くした婚約者の面影を引きずっているはずで、今の総騎士団長は魔物に殺されて息子に代替わりしているはずで、アンゼルム大公は大怪我により体が不自由になっているはず、なのだそうだ」

 第一王子殿下の妃は隣国の姫君で、二人は十代前半で婚約した時から相思相愛で、今でも仲睦まじいおしどり夫婦として有名だ。
 昨年元気な男の子を授かり、バルテン王国中が祝福ムードになったのは記憶に新しい。

 総騎士団長は、私の父と同世代の渋いおじさまだ。
 息子もきっと騎士をしているのだろうが、私は顔も名前も知らない。

 アンゼルム大公は、現国王陛下の年の離れた異母弟にあたる。
 甘いマスクの女たらしで、浮名が絶えることがないゴシップ新聞の常連だ。
 この前も人気舞台女優と優雅にダンスをしていたと新聞に書いてあったのを覚えている。
 体が不自由なら、そんなことができるはずがない。

「あの女が、会ったこともない私たちのことを知っていたのは確かなんだが、私たちの現状については的外れなことばかりだ。
 それだけならそれだけなら特に実害もないんだが、どういうわけか機密事項も知っていた」

 機密事項?なんだか嫌な予感がして、私はぎゅっと唇をひき結んだ。
 
「実は、二年ほど前にアブラッハが元気がなくなったことがあった。
 葉が萎れ、実の数も少なくなって」

「待ってリック! それって、今話してた機密事項じゃないの⁉」

 厳重に警備されているアブラッハの詳細は、ほとんど秘匿されている。
 なんたって、バルテン王国のかけがえのない宝なのだ。
 第二王子殿下の護衛騎士を務めるヘンリックなら、多少はアブラッハの話題に触れることもあるだろうが、それを家族とはいえ私たちに漏らすのは問題だと思う。

「そうだが、最後まで聞いてほしい。
 これはおそらく、私たちに関係することだと思うんだ」   

 ヘンリックはお茶を一口含んで喉を潤し、それからまた話し始めた。

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