転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 私は考え込んだ。

 前世で読んだ小説や漫画で、そういう設定のものがあった。

 小説や漫画やゲームの世界になんらかの理由で日本人が入り込んで、オリジナルの内容では死んでしまうキャラを助けようとしたり、未来を知っていることで自分に有利な展開にしようとしたりするのだ。

 自称聖女の場合は、オリジナルでは逆ハーレムをつくれるキャラになれたのに、ハーレム要因の男性たちが心身ともに健康で篭絡できなかった……ということなのではないだろうか。

「あの女は、暇さえあれば私とルーカス様に絡んでくるんだ。
 なんでも、私がオシとかいうやつらしい。
 ルーカス様も容貌が整っているから女性にモテるんだが、あの女はなんというか、私たち両方の気を惹こうとする。
 私は既婚者だし、ルーカス様には婚約者がいると何度も言っているのに、全然諦めない。
 最近は目が血走ってて、怖いくらいだ」

 ヘンリックはマリアンネ一筋で、第二王子殿下もハイデマリー様一筋だ。
 割り込む隙などないというのに、そこまでして逆ハーレムしたいのだろうか。
 私にはさっぱり理解できない。

「アブラッハの機密を知っていた理由が明らかになるまでは、あの女を排除することはできない。
 こんな状況で私が一時的に独身に戻ったら、ものすごく面倒なことになってしまう。
 あの勢いと非常識さでは、押しかけ女房しにこの家に突撃してくることも十分に考えられる。
 それだけは、なんとしてでも避けたいんだ……」

 ヘンリックが悲壮な顔になった。
 隣に座ったマリアンネは、そんな彼に寄り添い手を握った。

「だから最近、なんだか冴えない顔をしていたのね」

「マリア、すまない……」

「謝らないで。リックのせいじゃないわ」

「リサとエルも……私の事情に巻き込んで、すまない……
 私がこんな顔じゃなかったら、あの女に好かれることはなかったのに……」

「それこそリックのせいなんかじゃないわよ」

「そうだぞ。リックも被害者じゃないか」

 妙な女のせいで予定変更を余儀なくされるのは業腹だが、こんな事情では仕方がない。
 
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