転生小説家の華麗なる円満離婚計画

 それから三日後の昼下がり、私はエルヴィンとマリアンネと一緒に馬車に揺られていた。

 王城にいるヘンリックに差し入れを持って行くという名目で、カリナに会うのが目的だ。

 今日は第二王子殿下とヘンリックは午後から騎士団の訓練場に行くことになっており、そういう日は必ずカリナが絡んでくるのだそうだ。
 
 カリナはアンゼルム大公に保護されているが、ある程度自由に行動することが許されている。
 いわゆる、泳がされている状態だ。
 そうやってカリナを監視して、ボロを出すのを待っているのだ。

「お嬢、本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫に決まってるでしょ。
 リックに差し入れして、カリナの顔を見て、それで終わりよ」

「お姉様、腹が立っても喧嘩を売らないでくださいね?」

「そんなことしないわ。
 売られたら買うかもしれないけど」

 エルヴィンとマリアンネはそれぞれ私の心配をしているが、私は気合十分だ。
 
 今日の私は、久しぶりにきちんとした化粧をして、銀色の髪をハーフアップに結い、ミントグリーンの清楚なデイドレスを着ている。
 キラキラ貴公子ヘンリックと並ぶと見劣りするかもしれないが、上品な貴族の若奥様といった装いになっているはずだ。

 マリアンネはというと、キルステン伯爵家にいた時と同じように顔と髪を隠している。
 円満離婚した後にヘンリックと偶然出会うという設定にする予定なので、今は外で顔を晒すことができないのだ。

 それに対し、エルヴィンは精悍に整った顔がよく見えるように前髪をすっきりと上げている。 
 これは、カリナへの罠でもある。
 私が知っているカリナなら、必ず彼に興味を示すはずだ。

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