転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「今日きみが来るってリックに聞いてね。
 久しぶりに会えるって楽しみにしていたんだよ」

「恐れ多いことでございます」

「まぁ、そう畏まらないで。
 僕とリックは幼馴染みたいなものでね。
 主従ではあるけど、友人なんだ」

「主人からもそのように伺っております」

「そっちのメイドのことも聞いているよ」

 殿下が視線を向けたのは、私の後ろに控えるマリアンネだ。
 
「きみたちにはいろいろと事情があるようだけど、結婚してからのリックは本当に幸せそうだ。
 これからもあいつを支えてあげてね」

 殿下は私とヘンリックが離婚を前提とした白い結婚であることも、離婚後にマリアンネと結婚する予定であることも知っている。
 ずっと探していた初恋の女の子が見つかったことを、殿下は我がことのように喜んで祝福してくれたのだそうだ。

「もちろんでございます」

 私が代表で応えたが、三人同じ気持ちだ。
 
 ヘンリックのためにも、早くカリナをなんとかしなくてはいけない。

「リサ! ルーカス様!」

 私たちがいるのに気が付いたらしいヘンリックが、木剣片手にこちらに駆けてきた。

「お疲れ様です、リック。
 差し入れを持ってきたわよ」

 私がそう言うと、マリアンネが手に持っていたバスケットを差し出した。
 中には、マリアンネお手製のクッキーとサンドイッチが入っている。

「ありがとう。助かるよ」

 蕩けるような笑顔の彼は、さりげなくマリアンネの手を撫でながらバスケットを受け取った。
 マリアンネは真っ赤になり、殿下は呆れたような驚いたような目を友人に向けた。

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