転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 激しい怒りで青い瞳を燃え上がらせたエルヴィンが、ゆらりと立ち上がった。

「……ひとっ走り、あの女を殺してくる」

「待て! 早まるな! 私の話も聞いてくれ!」

 部屋を飛び出して行こうとするエルヴィンを、疲れた顔をしたヘンリックが慌てて止めた。

 今は、もう夜更けといえるくらいの時間だ。

 私とカリナとの因縁について三人に詳しく話して聞かせるためにヘンリックの帰宅を待っていたので、こんな時間になってしまったのだ。

「落ち着いて、エル。
 カリナを殺すのは最終手段よ。
 あなたならいつでもそうできるんだから、今すぐじゃなくてもいいでしょう?
 まずはリックの話を聞いてみて、それからまた考えるということにしない?」

「……お嬢がそう言うのなら」

 ヘンリックを振り払って出て行きそうな勢いのエルヴィンだったが、私が宥めると渋々ながら聞き入れてくれた。

「リサの話も衝撃的だったが……私が今からする話は、それ以上だと思う。
 覚悟して聞いてほしい」

 私たちと別れた後、第二王子殿下は国王陛下に報告に走り、ヘンリックは本当にカリナを牢獄に放り込んだのだそうだ。

「口を割らなければ本当に拷問するつもりだったが、私が本気だとわかるとすぐに全部吐いた」

 カリナは、またもここが本の中の世界だと言い張った。
 以前も同じことを言って誰もまともに取り合わなかったが、今回のヘンリックはその本の内容について詳しく聞いてみることにしたのだそうだ。

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