転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「リック、その魔王というのはどういったものなのかわかるか」

 険しい顔でエルヴィンが問うた。
 場合によっては、魔王討伐に協力するつもりなのだろう。
 
「カリナが言うには……褐色の肌、黒髪、金色の瞳で、背中に黒い翼がある若い男の姿をしているそうだ」

 え? それって……

「……その魔王が、王城を襲うのか」

「そうらしい。
 とんでもなく強力な魔法を操って、王城だけでなくバルテン王国全体を滅ぼそうとする、と言っていた」

「魔王には、そうする目的があるのか?」

「いや、そんなことは言っていなかったな。
 とにかく、突然襲ってきたから、それを迎え撃ったと本に書いてあったそうだ」

「そうか……」

 エルヴィンは神妙な顔で俯いた。

 私はそんなエルヴィンをじっと見つめ、マリアンネの涙がひっこんだ顔でエルヴィンを見ている。

「どうした?」

 ヘンリックは私たちの変化に気が付き、怪訝な顔をした。

「お嬢」

「ええ、そうね。こうなったら、もう打ち明けたほうがいいわ」

「打ち明けるって、なにを?」

 エルヴィンは、申し訳なさそうな顔をしながらヘンリックを見た。

「その魔王というのは……おそらく、俺のことだ」
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