転生小説家の華麗なる円満離婚計画

「お姉様、とてもきれいですわ!」

「ありがとう、マリー」

 あの深夜の話し合いから十日後。

 私はマリアンネに手伝ってもらって、王城で開かれる夜会に参加するための準備を整えたところだ。

 扉がノックされ、返事をすると煌びやかな夜会服を着たヘンリックと、全身真っ黒な服を着たエルヴィンがはいってきた。
 
「着飾ったリサを見るのは久しぶりだね。
 とても美しいよ」

「ありがとう、リック。
 でも、あなたの隣に立つと見劣りしてしまうわ」

 ごく自然に賛辞の言葉をくれるヘンリックだが、二人並ぶとどう考えても私は霞んで見えてしまう。
 私だってそれなりに整った容姿をしているという自覚はあるが、別次元のヘンリックとは最初から張り合う気にもなれない。

「そんなことありません!
 リックも素敵ですけど、お姉様もすっっっごくきれいじゃありませんか!
 見劣りするなんて、あり得ません!」

「そうだぞ、お嬢。
 お嬢よりきれいな女なんて、この世に存在しない」

 相変わらずな二人に、私は苦笑した。
 とはいえ、きれいだと言われて悪い気分ではない。

「ありがとう。それじゃ、行ってくるわ。
 エル、打合せ通りにね」

「任せておいてくれ。
 リック、お嬢を頼んだぞ」

「ああ、リサのことはなにも心配いらないからな」

 私はヘンリックと二人で馬車に乗り込み、王城に向かった。

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