森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
◇
「さぁ、何から話しましょうか?」
移動したサロンでテーブルを囲んだ。王女はまっすぐにリーゼロッテを見つめている。言葉を探しつつも、聞きたいことはたったひとつだ。
「クリスティーナ様が生きていらっしゃったこと、わたくし心からうれしく思います。ですが、なぜクリスティーナ様はここにいらっしゃるのですか……?」
「そうね。まず初めに言っておくわ。わたくしの名はヘッダ・バルテンよ。第一王女はあの日、死んだのだから」
「ですが……」
目の前にいるのはクリスティーナだ。困惑していると王女の隣に座っていたアルベルトと目が合った。
「驚かれるのも無理はありません。わたしもこのバルテン家に来るまで、何も知らされていませんでしたから」
「仕方ないでしょう? わたくしだって目覚めたらもうバルテン家にいたのだから」
非難の含んだアルベルトの口調に、クリスティーナは居丈高に返した。人を従え慣れた態度は、王女の姿そのものだ。
「事情はわたしからお話しいたしましょう。我が娘ヘッダは、龍から託宣を受けていたのです」
「ヘッダ様が託宣を……?」
バルテン子爵は穏やかな表情で頷いた。
「ヘッダが賜った託宣は、クリスティーナ様をお守りし身代わりとなるというものでした。生まれた時から病弱で成人までは生きられないと言われた娘です。それが思った以上に長い時を過ごせました。これもクリスティーナ様がいてくださったからこそ……」
静かに言った子爵の横で、バルテン夫人が涙ぐむ。夫人の手に自身の手のひらを添え、子爵はリーゼロッテにやさしげな顔を向けた。
「ではヘッダ様は……」
「はい、龍の託宣を全うし、ヘッダは天へと旅立ちました。こうして無事に王女殿下をお守りできたこと、娘も誇りに思っていることでしょう」
「そう……だったのですね。ですがなぜ、クリスティーナ様がヘッダ様ということに……?」
あの時亡くなったのがヘッダだと言うのなら、クリスティーナの葬儀をとり行う必要はなかったはずだ。王女の死に、国中がいまだかなしみに沈んでいる。
「さぁ、何から話しましょうか?」
移動したサロンでテーブルを囲んだ。王女はまっすぐにリーゼロッテを見つめている。言葉を探しつつも、聞きたいことはたったひとつだ。
「クリスティーナ様が生きていらっしゃったこと、わたくし心からうれしく思います。ですが、なぜクリスティーナ様はここにいらっしゃるのですか……?」
「そうね。まず初めに言っておくわ。わたくしの名はヘッダ・バルテンよ。第一王女はあの日、死んだのだから」
「ですが……」
目の前にいるのはクリスティーナだ。困惑していると王女の隣に座っていたアルベルトと目が合った。
「驚かれるのも無理はありません。わたしもこのバルテン家に来るまで、何も知らされていませんでしたから」
「仕方ないでしょう? わたくしだって目覚めたらもうバルテン家にいたのだから」
非難の含んだアルベルトの口調に、クリスティーナは居丈高に返した。人を従え慣れた態度は、王女の姿そのものだ。
「事情はわたしからお話しいたしましょう。我が娘ヘッダは、龍から託宣を受けていたのです」
「ヘッダ様が託宣を……?」
バルテン子爵は穏やかな表情で頷いた。
「ヘッダが賜った託宣は、クリスティーナ様をお守りし身代わりとなるというものでした。生まれた時から病弱で成人までは生きられないと言われた娘です。それが思った以上に長い時を過ごせました。これもクリスティーナ様がいてくださったからこそ……」
静かに言った子爵の横で、バルテン夫人が涙ぐむ。夫人の手に自身の手のひらを添え、子爵はリーゼロッテにやさしげな顔を向けた。
「ではヘッダ様は……」
「はい、龍の託宣を全うし、ヘッダは天へと旅立ちました。こうして無事に王女殿下をお守りできたこと、娘も誇りに思っていることでしょう」
「そう……だったのですね。ですがなぜ、クリスティーナ様がヘッダ様ということに……?」
あの時亡くなったのがヘッダだと言うのなら、クリスティーナの葬儀をとり行う必要はなかったはずだ。王女の死に、国中がいまだかなしみに沈んでいる。