見えない君は大切な人



「他の人たちは見えているんです。話しているんです。触れているんです。でも、私には見えない、聞こえない、触れているのかさえ
もわかんないんです。何でですか、私はおかしいんですか。先生……」


「はるか、ちゃん。他には?」


「他、あ、猫。昔、友達といっしょにかわいがっていた猫がいるんです。今日、似てる猫みつけたんです。そのとき一緒にいた友達が、なんか懐かしくて。凪ちゃんっていうんですけど。」


「そっか」


「まだ思い出してはないんです。でも、なんか、思い出したい。でも怖いんです。」


先生は一度、静かに息を吐いた。


どこかで答えを用意していたみたいに、迷わず私の目を見て言った。


「遥ちゃん。先生から、ちょっとだけ話をしてもいいかな」


私はうなずいた。


その口調は、いつもよりほんの少しだけ――慎重だった。


「白石蒼真くんのことだけどね、遥ちゃんがこの病院に通いはじめた当初……彼の名前は、何度か出ていたよ。遥ちゃんの口からも」


「……!」


胸の奥が、ぎゅっと縮こまる。
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