見えない君は大切な人
「でもね、遥ちゃんはあるときから彼のことを一切話さなくなった。そしてその頃から、記憶の空白も生まれていた」
私は、言葉を失った。
「君に見えない彼のことを、周囲の人が“見えている”というのは、ある意味で自然なことかもしれない。君の心が、彼の存在を――強く遮断しているのかもしれないね」
遮断。
その言葉に、心のどこかがざわついた。
「凪ちゃんというお友達も、おそらく……その空白の時間と関係がある。遥ちゃんの“心の奥”が、何かを思い出しかけてる。でも、まだ扉を開ける準備ができていない。だから苦しくて、怖くて――見えないんだよ」
「……じゃあ、私は壊れてなんか……ないんですか」
思わずこぼれた言葉に、先生は首を横に振った。