【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
「ちょっ、待って、イグナート……っ」
イグナートが向かう先が隣の部屋の仮眠用ベッドであることに気づいて、ライザはじたばたと暴れる。だが彼の腕は一切揺るがず、そのままベッドに下ろされた。
起き上がる間もなくイグナートが覆いかぶさってきて、ライザは動けない。両手首はしっかりとシーツに押しつけられているし、両脚は彼の膝に挟まれている。かろうじて動くつま先をばたばたとしてみるものの、なんの抵抗にもなっていないだろう。
「どうして、こんなこと」
震える声でつぶやくと、ライザを見下ろすイグナートが苦い笑みを浮かべた。
「……ごめん。でも、最後にどうしても会いたかった」
切なげな声に、胸が苦しくなる。ライザだって本当は、ずっと会いたかった。だけど、会えば別れが辛くなることも分かっていたから必死に堪えていたのに。
「ライザ……」
名前を呼びながら、イグナートが顔を近づけてくる。思わず目を閉じると、唇に柔らかいものが触れた。
「会いたかった。ずっと城に泊まり込みで、家にも帰れなくて」
唇だけでなく頬や額などあちこちに口づけを落としながら、言い訳のようにイグナートが囁く。
ライザの家に来なかったのは、忙しかったからなのだと、彼の言葉に縋りたくなる。
彼の唇が触れた場所からどんどん熱が広がっていって、いつしかライザの身体は彼に抱かれる準備を始めていた。だが、ここは彼の執務室。こんな場所で抱かれるのは初めてだし、仕事中だという気持ちもあって思わず抵抗してしまう。
「ん、待って、でもこんなところで……っ」
「今日だけ許して。離れ離れになる前に、ライザを抱きたい。今夜はもう……会えないから」
懇願するようなその声に、ライザも目を伏せて抵抗をやめる。
「……浄化の旅に、出るのよね」
「あぁ。ヴェーラ様の護衛として、各地を巡ることになる。必ず戻るが、何年先になるかは……分からない」
イグナートは、深い息を吐いた。くっきりと刻まれた眉間の皺が、彼の抱える重圧を物語っている。
優秀な騎士団長であるイグナートが同行すれば、旅の安全は保証されるだろう。
だけど、会えない期間が長すぎる。イグナートとの関係は、今日で終わりだ。戻ってきた彼と、ライザの人生が交わることは、もうない。
浄化の旅が終わるであろう五年後、自分は一体何をしているだろうとライザは思わず遠い未来に思いを馳せた。
癒し手として働く日々は充実しているが、曲がりなりにも伯爵令嬢としていつまでも独り身なのは外聞が悪いだろう。もしかしたら、親の決めた相手と結婚しているかもしれない。
想像しただけで胸がちくりと痛んで、ライザは小さく息を止めた。
ライザが将来を共にしたい人なんて、イグナートしかいない。だけど、彼とは身体だけのつきあいだ。将来を約束できるような関係ではない。彼は一度だって、ライザに好きだとか恋人になってほしいだなんて言ったことはないのだから。
だけど、別れを惜しむくらいにはライザのことを好きでいてくれたのだろう。最後に会いたいと思ってもらえたなら、幸せだ。
今だけこの逢瀬に溺れてしまおうと決めて、ライザはイグナートの背に手を回して強く抱きついた。
イグナートが向かう先が隣の部屋の仮眠用ベッドであることに気づいて、ライザはじたばたと暴れる。だが彼の腕は一切揺るがず、そのままベッドに下ろされた。
起き上がる間もなくイグナートが覆いかぶさってきて、ライザは動けない。両手首はしっかりとシーツに押しつけられているし、両脚は彼の膝に挟まれている。かろうじて動くつま先をばたばたとしてみるものの、なんの抵抗にもなっていないだろう。
「どうして、こんなこと」
震える声でつぶやくと、ライザを見下ろすイグナートが苦い笑みを浮かべた。
「……ごめん。でも、最後にどうしても会いたかった」
切なげな声に、胸が苦しくなる。ライザだって本当は、ずっと会いたかった。だけど、会えば別れが辛くなることも分かっていたから必死に堪えていたのに。
「ライザ……」
名前を呼びながら、イグナートが顔を近づけてくる。思わず目を閉じると、唇に柔らかいものが触れた。
「会いたかった。ずっと城に泊まり込みで、家にも帰れなくて」
唇だけでなく頬や額などあちこちに口づけを落としながら、言い訳のようにイグナートが囁く。
ライザの家に来なかったのは、忙しかったからなのだと、彼の言葉に縋りたくなる。
彼の唇が触れた場所からどんどん熱が広がっていって、いつしかライザの身体は彼に抱かれる準備を始めていた。だが、ここは彼の執務室。こんな場所で抱かれるのは初めてだし、仕事中だという気持ちもあって思わず抵抗してしまう。
「ん、待って、でもこんなところで……っ」
「今日だけ許して。離れ離れになる前に、ライザを抱きたい。今夜はもう……会えないから」
懇願するようなその声に、ライザも目を伏せて抵抗をやめる。
「……浄化の旅に、出るのよね」
「あぁ。ヴェーラ様の護衛として、各地を巡ることになる。必ず戻るが、何年先になるかは……分からない」
イグナートは、深い息を吐いた。くっきりと刻まれた眉間の皺が、彼の抱える重圧を物語っている。
優秀な騎士団長であるイグナートが同行すれば、旅の安全は保証されるだろう。
だけど、会えない期間が長すぎる。イグナートとの関係は、今日で終わりだ。戻ってきた彼と、ライザの人生が交わることは、もうない。
浄化の旅が終わるであろう五年後、自分は一体何をしているだろうとライザは思わず遠い未来に思いを馳せた。
癒し手として働く日々は充実しているが、曲がりなりにも伯爵令嬢としていつまでも独り身なのは外聞が悪いだろう。もしかしたら、親の決めた相手と結婚しているかもしれない。
想像しただけで胸がちくりと痛んで、ライザは小さく息を止めた。
ライザが将来を共にしたい人なんて、イグナートしかいない。だけど、彼とは身体だけのつきあいだ。将来を約束できるような関係ではない。彼は一度だって、ライザに好きだとか恋人になってほしいだなんて言ったことはないのだから。
だけど、別れを惜しむくらいにはライザのことを好きでいてくれたのだろう。最後に会いたいと思ってもらえたなら、幸せだ。
今だけこの逢瀬に溺れてしまおうと決めて、ライザはイグナートの背に手を回して強く抱きついた。